遺言書について

遺言書とは、亡くなった人が生前に行う財産の残し方についての意思表示をまとめた、法的な効力のある文書のことです。

財産の相続方法に希望がある場合は、遺言書に記載しておくことで、希望通りの相続を叶えることができます。

また、遺言書があると、遺産分割協議を行う必要がなく、スムーズに銀行の解約手続や不動産登記(相続登記)手続を行うことができるため、相続人にとっても大変便利です。

一方で、遺言書に形式的な不備がありますと無効となったり、相続人の間で内容について争われるなどして、円満・円滑な遺産承継が叶わないという事態も起こり得ますので、作成にあたっては十分な注意が必要です。

遺言書の種類

自筆証書遺言

遺言者(遺言を行う人)がみずから、手書きで遺言書を作成する方法です。
費用は抑えられますが、一定の様式に従って作成しないと無効になるおそれがありますので、注意を要します。

自筆証書遺言のメリット

  • 費用を最小限に抑えられる。

自筆証書遺言のデメリット

  • 遺言書が発見されない場合や、廃棄・隠匿・改ざん等のリスクがある。
  • 相続手続に利用するためには、家庭裁判所で遺言書の検認という手続きを行う必要があるため、手続に時間と手間がかかってしまう。
  • 形式に不備がある場合は、無効となる可能性がある。

※法務局における自筆証書遺言保管制度を利用することで、一点目の「発見されない、廃棄・隠匿・改ざん」リスクの減少が期待できます。
(自筆証書遺言保管制度については後述をご参照ください。)
※家庭裁判所の検認手続きを経ずに遺言書を開封してしまうと、5万円以下の過料の対象となりますので、ご注意ください。

公正証書遺言

公証役場で、公証人に遺言書を作成してもらう方法です。
自筆証書遺言を比較すると費用は少しかかりますが、公証人のチェックを受けるため無効となるリスクが限りなく低く、遺言内容を確実に実現できるのが大きなメリットです。

公正証書遺言のメリット

  • 公正証書の原本は公証役場で保管されるため、紛失・廃棄・隠匿・改ざんのリスクがない。
  • 家庭裁判所での検認手続を行う必要がなく、公正証書遺言を使用してそのまま相続手続を行うことができる。
  • 公証人が作成するので、無効となるリスクが限りなく低い。
  • 文字を書けない人でも作成することができる。

公正証書遺言のデメリット

  • 公証人手数料等の費用がかかる。
  • 証人が二人必要である。

※未成年者、推定相続人及び受遺者並びにその配偶者、直系血族は証人になることができませんのでご注意ください。

自筆証書遺言書保管制度

令和2年に新設された制度で、自筆証書遺言を法務局で管理・保管してもらう制度です。
管轄の法務局に申請することで、誰でも利用が可能です。

自筆証書遺言保管制度のメリット

  • 法務局で保管されるため、紛失・廃棄・隠匿・改ざんのリスクがない。
  • 相続手続に利用するにあたり、家庭裁判所での検認手続を行う必要がない。
  • 公正証書遺言と比べて手数料が安価である。(3,900円)
  • 法務局から指定した人に、遺言者の遺言書の保管の事実を通知することができる。(遺言者が希望した場合のみ)

自筆証書遺言保管制度のデメリット

  • 法務局は遺言書の内容を確認しないため、形式に不備があると遺言書が無効となる可能性がある。
  • 遺言者本人が法務局に出頭して手続きを行う必要がある。(代理手続、郵送手続は不可)
  • 文字を書けない人は作成することができない。

家庭裁判所での検認手続きは不要ですが、遺言内容を確認するためには、必要書類を揃えたうえで法務局に対して「遺言書情報証明書」という書類の交付請求を行う必要があります。
公正証書遺言と比較して、遺言の内容を確認するまでに少し時間がかかりますので、この点もデメリットの一つと言えるでしょう。

お手続に迷ったときには、
専門家にご相談ください。

当事務所では、お客様の意思をお伺いしたうえで、遺言書の文案から検討・作成させて頂きます。
形式的な不備がないかどうか、適切な文言が使われているかどうか、将来に法的なトラブルが起こらないかどうか等、専門家の視点からしっかりとチェックさせて頂きます。安心してお任せください。